【提出しました】北九州市「生涯学習ビジョン(素案)」への意見(パブリックコメント)
NPO法人アクティブキャリア北九州では、地域の学びやデジタル活用支援、孤立防止などの観点から、市の生涯学習ビジョン素案に対し以下のとおり意見を提出しました。
※当法人が提出した意見書であり、市の見解ではありません。
パブリックコメント
案件名: 北九州市生涯学習ビジョン(北九州市生涯学習推進計画)(素案)への意見
提出者: NPO法人アクティブキャリア北九州(ACK)
理事長 林田英利 副理事長・担当 今別府隆志
提出日:2025年12月12日(金)
1. 生涯学習ビジョン(素案)への評価
本素案において、従来の成果指標型から、予測困難な時代(VUCA)に対応する羅針盤としての「ビジョン」策定へと転換された点(P.4)、および「個人のウェルビーイング」と「社会のウェルビーイング」の好循環を目指す方向性(P.21)については、強く賛同いたします。
特に、学びが自己完結せず、活動を通じて地域や社会へ還元され、それが次の学びへつながる「学びと活動のサイクル」(P.3)を中核に据えた点は、地域コミュニティの希薄化や孤独・孤立が進む本市(P.7, P.8)において極めて重要な視点であると評価します。
なお、当法人は、シニアの第二の人生設計支援、個別相談による伴走支援、デジタル活用を通じた孤立防止、人生の転機に寄り添う相談事業を継続的に実施してきました(一部は実施予定)。こうした「個人に寄り添う学び」の観点は、素案においてまだ十分に記述されておらず、今後の施策設計において“個別最適化された伴走支援”をご検討いただければ、より実効性が高まるものと考えます。
2. 具体的な改善提案
提示された素案は理念として優れていますが、現場での実効性を担保するための具体的な仕組みや支援策について、補足をご検討いただけますとより明確になるように思われます。元の案で懸念されていた点や、当法人の現場経験を踏まえ、以下の具体的な改善・追記を要望します。
(1)「学習コーディネーター」の職務定義・配置方針の明確化
素案P.29の図には「社会教育士」や「社会教育団体」等の記載がありますが、それらが具体的にどう連携し、市民の学びを活動へつなぐのかが不明瞭です。理念である「学びと活動のサイクル」(P.3)を回すためには、市民と地域活動のマッチングを行う専門職の機能があることで、学びと活動の接続がより円滑になると考えます。
計画には、以下のような具体的な配置・運用方針をご検討いただければ幸いです。
- 各市民センターにおける相談員(学習コーディネーター)の配置基準(最低1名の配置など)
- 行政職員だけでなく、NPO等の外部人材や地域人材との役割分担・委託の可能性
- 地域団体と連携した「伴走支援」の仕組み化
(2)デジタル格差(デジタルデバイド)解消に向けた必須環境の整備
P.5で「AI技術の進化」、P.11で学習ニーズとして「インターネットを利用したオンライン学習」が挙げられていますが、これを実現するためのインフラ支援について、さらに触れていただけると施策の実効性が高まるように思います。
単身高齢者が増加する本市(P.7)において、デジタル環境の有無が学習機会の格差に直結します。以下の環境整備を施策としてご検討いただければ幸いです。
- 市民センターへの安定した無料Wi-Fiの標準整備
- 学習用タブレット等の機器貸出制度の創設
- スマホ・タブレットの初期設定支援や、高齢者向けデジタル活用講座の定期的開催
- オンライン学習と対面学習を組み合わせた「ハイブリッド型学習」の推進
- オンライン交流会の定期運営
- デジタル困難者の伴走支援
また、素案P.7で示されている単身世帯の増加は、孤立リスクの上昇と密接に関係しています。デジタル支援は単なる学習機会の提供ではなく、「人とつながるための社会的インフラ」として孤立防止策の中核を担います。よって、デジタル環境整備は“学習支援”だけでなく“孤立防止施策”としても位置づけていただければ、より効果的な施策になると考えます。
さらに、生成AIを含む新たなデジタル技術の普及が急速に進む中で、市民がこれらを適切に活用できるよう支援することも、生涯学習の重要な要素になると考えます。特に高齢者やデジタル初心者にとって、生成AIの活用は、情報取得や文章作成など日常生活の利便性を高めるだけでなく、オンラインでの学習機会やコミュニケーション機会を広げることによって、孤立感の軽減にも寄与する可能性があります。生成AIを活用した情報収集、相談先の探索、地域活動の企画補助などに関する基礎的なリテラシーを学ぶ場を設けていただければ、市民の学びの幅が広がるとともに、社会的つながりの再構築にもつながるものと考えます。
なお、素案では「学び」から「活動」への循環が示されていますが、その前提となる“学ぶ目的”や“自分が何を大切にしているか”といった自己理解の視点が十分に記述されていません。学びが市民一人ひとりの人生に根ざした行動につながるためには、価値観・強み・人生の方向性などの自己理解を深める機会が不可欠と考えます。学習コーディネーターの個別相談機能や、市民センターでの学びの伴走支援の中に、自己理解を支える対話的なプロセスを盛り込んでいただければ、学びがより主体的で継続的なものになると考えます。
(3)「学び」から「活動」への移行モデル(ロールモデル)の提示
P.8で示された「自治会加入率の低下」や担い手不足を解決するためには、市民が「学んだ結果、どう地域に関われるか」を具体的にイメージできる必要があります。抽象的なサイクルの図(P.3)に加え、以下のような具体的な接続モデルをご提示いただければ、市民にとって理解しやすくなると考えます。
- 【ICT学習 × 地域活動】:SNS講座受講者が、自治会や市民活動団体の広報担当として活躍する。
- 【健康学習 × 見守り】:ウォーキング講座受講者が、地域の防犯パトロールや登下校見守り、パトラン活動などに参加する。
- 【子ども支援学習 × 多世代交流】:子育て支援や発達理解、コミュニケーションに関する講座を受講した市民が、放課後子ども教室、地域寺子屋、学童ボランティア、多世代交流イベントの運営補助などに参加し、地域の次世代を支える担い手として活躍する。
(4)市民層ごとの特性に応じた支援策の体系化
素案では全世代的なデータ(P.6-9)が中心ですが、各層が抱える学習阻害要因は異なります。一律の支援ではなく、以下のような層別の支援方針についてご検討いただければ幸いです。
- 若者層:地域行事への参加に対し、ポイント制度などのインセンティブ設計や、SNSを活用した参加導線の整備。
- 働く世代:時間的制約に対応した、夜間・休日講座の拡充や、短時間で学べるモジュール型学習の提供。
- 子育て世代:託児付き講座の拡充や、自宅から参加できるオンライン交流会の定期運営。
- 高齢者:移動支援(交通手段の確保)や、地域拠点への出張講座の充実。
特に若者層は地域との接点形成が重要であり、学びを通じた“緩やかな参加導線”についてご検討いただけると、より効果的な支援につながると考えます。
(5)計画の進捗を測る評価指標(KPI)の設定
P.4に「個別の指標を設ける従来の計画では対応が困難」との記述がありますが、15年間のビジョンであっても、進捗を測るための客観的な指標は必要です。理念の浸透度を測るため、以下のようなKPIの設定を提案します。
- オンライン講座およびハイブリッド講座の実施数・参加者数
- 学習相談(コーディネーターへの相談)件数およびマッチング成立数
- 講座受講後に「新たに地域活動へ参加した」人の割合
- 市民センター等におけるWi-Fi整備率・利用率
さらに、実施件数等のプロセス指標に加えて、市民の行動変容や地域社会への貢献度を測るアウトカム指標も併せて設定いただくことで、計画の成果がより明確になるものと考えます。
例:
- 学びをきっかけに地域活動へ新規参加した市民数の増加
- 独居高齢者の学習参加率の変化
- デジタル活用によって相談先・交流機会が増えた市民の割合
これらを組み合わせることで、ビジョンが実際に市民の生活をどれだけ改善したかを可視化できます。
3. 結論
本ビジョンが掲げる「学びを軸とした地域共生の実現」は、当法人が目指す方向性とも合致します。
だからこそ、理念を絵に描いた餅に終わらせず、現場で市民の背中を押すための「人(コーディネーター)」、「環境(ICT)」、「具体的な出口(活動モデル)」への投資と整備を計画の中に明確に位置づけていただければ、より実効性が高まるものと考えております。
当法人は、「自分らしいキャリアの実現と、楽しく豊かな人生への移行を支えること」を理念とし、一人ひとりが自分の原点となる価値観や強みを見つめ直す“自己理解”を軸に、シニアのデジタル支援、地域交流支援、孤立予防、地域活動への伴走支援を継続的に行っています。本ビジョンが、北九州市における“学びを軸とした地域共生の実現”に向け、具体的かつ実行可能な計画として具現化されることを期待し、上記の提案を行います。
以上
※ 本意見は、北九州市のより良い計画づくりに寄与することを目的としています。

